メリットだらけの家族信託・・・ではない?

ア)目的を達成するためには、家族信託を利用するしかないか?という視点

近年、家族信託についてはテレビや雑誌で取り上げられることが多くなったため、家族信託を検討する方も増えたように思います。

需要が高まってきたため、専門家の間でも大変注目を集めるようになり、専門家自身が家族信託の経験値を上げたいがために、わざわざ家族信託をしなくてもいい事例であるのに、あえて家族信託をオススメする専門家もいるようです。

また、家族信託の手続きは難易度が高いため、他の制度と比べて専門家費用が高額になる傾向があります。

お客様の要望・状況をしっかり聞き取りした上で、家族信託を利用しなくても他の手続きで目的が十分達成できる事例においては、むしろ家族信託は利用すべきではないと筆者は考えています。

なぜなら家族信託は、表向きは簡単な仕組みに見えますが、実はかなり複雑に設計しなければならない手続きであり、継続した専門家の協力が不可欠になることが多いからです。

また、判例が少ないため、まだまだ成熟していない手続きといえることも理由の1つです。

家族信託は自由度の高い手続きであるため、家族信託の知識に乏しい者だけで手続きすると本来の家族信託の制度趣旨からかけ離れた契約内容でスタートしてしまうこともあり得ます。スタートさせることができたとしても、トラブルが発生したときに、最終的には裁判所に「信託契約は無効」と判断されることも考えられます。そうなってしまっては意味がありません。

誤解をしてほしくないのですが、家族信託は危ないから利用しない方がいいという意味ではありません。

家族信託は現代の多様な家族関係においては大変有用であるのですが、万能な手続きだと誤解して、「家族信託ありき」で話を進めない方がよいという意味です。

遺言、生前贈与、後見制度等の他の選択肢も検討して、それでも十分に目的が達成できないのであれば「家族信託を利用した方がいい」という順序で検討すべきであると言いたいのです。

「とにかく家族信託をやりましょう」といった姿勢の専門家には要注意です。他の制度との比較をしっかり説明してくれる専門家を選びましょう。

イ)家族信託の注意点(デメリット)

適正な家族信託を行なえば、デメリットはほとんどないと言ってもよいかと思いますが、あえて注意点をあげるとするならば次の6つです。

注意点1.適任な受託者がいないリスク
注意点2.損益通算ができなくなるリスク
注意点3.身上監護はできない
注意点4.税務処理が増える
注意点5.専門家への報酬が高額になりがち
注意点6.家族信託を得意とする専門家が少ない

注意点1:適正な受託者がいないリスク

家族信託において、最も肝となるのが「受託者の選任」です。

受託者は、専門家と同等とまではいかないまでも、家族信託についてしっかり理解して行なっていただかなければなりません。

筆頭にあげられるリスクは、信託財産の使い込みです。

受託者はあくまで受益者のために管理するのですから、自分のために財産を使ってしまっても本末転倒です。業務上横領罪となる場合もありますので、十分に気を引き締めて管理することが求められます。

しかし、人間は弱い生き物ですから、つい魔が差してしまうこともあるかもしれません。

そういうことが起きないように、専門家が「受託者監督人」という役職について、受託者を監視する仕組みにすることも可能です。

また、身寄りがなく、そもそも受託者になってくれる人がいないという場合もあります。

それなら司法書士等の専門家が受託者になったらいいのでは?という声が聞こえてきそうですが、実は我々専門職は受託者になることができません。

業務として反復継続して受託者になることは信託業法違反となってしまうため、行なうことができないのです。

その他の手段として、法人に受託者になってもらうことも検討してもよいでしょう。

個人であれば、どうしても死亡のリスクがありますが、法人であれば基本的にその心配はありません。

その代わり、株主関係や役員関係がこじれて上手く機能しなければ、逆に受益者のために動けなくなるというリスクもありますので、どのように受託者を定めるかというのは、家族信託にとって一番大きなテーマであるといえます。

注意点2:損益通算ができなくなるリスク

賃貸マンション等の収益物件を家族信託した場合、この賃貸マンションについて損失(赤字)が出たとしても、その損失は所得の計算上なかったものとされますので、他の不動産所得との損益の通算はできません。よって、翌年以後への損失の繰越もできません。

このように、税務的にデメリットが生じないかどうかは、税理士としっかり検討しなければなりません。

注意点3:身上監護はできない

家族信託は、「財産管理」の契約であるので、受託者において成年後見制度のような「身上監護」は行なうことができません。

身上監護とは、次のような手続きのことをいいます。
・病院に関する手続き
・介護保険に関する手続き
・介護施設等の入所や施設退所に関する手続き
・住居の確保に関する手続き
・医療に関する手続き
・障害福祉サービスの利用に関する手続き
・本人の生活環境に変化がないか定期的な本人確認等

受託者には、この身上監護権がありませんので、入院手続きや施設入所手続きを行なうことはできません。本人にとって身上監護権が必要であれば、成年後見制度を利用して、後見人として身上監護権を行使しなければなりません。

ただ、通常は受託者としてではなく、「家族」という立場で入院手続きや施設入所手続き行なうことができることが多いでしょうから、実際には親族である受託者が「家族」として身上監護権も行使できるケースは多いと思われます。

注意点4:税務処理が増える

例えば、賃貸マンションを信託した場合、そこから年間3万円以上の収入がある場合は、信託計算書や信託計算書合計表を税務署に提出しなければなりません。

また、不動産所得用の明細書の他に信託財産に関する明細書を別途作成して添付しなければなりません。

これらの税務処理は増えますが、かかりつけの税理士が元々おられるのであれば、特に負担は変わらないと思われます。

注意点5:専門家への報酬が高額になりがち

お客様の最も関心が高い点が、この手続き費用ではないでしょうか。

家族信託の手続きは、非常に綿密な打ち合わせとその家族に合った信託契約書を作成しなければならず、すべての案件がオーダーメイドになるとお伝えしました。

その名の通り、専門家側もいつもと同じ様式で行なうことは当然できませんし、通常の業務よりも責任は一層重いものとなります。

さらに、この家族信託は長期に渡って効力が続く性質上、どうしても要所要所で専門家のサポートが必要となってきます。

それらのことを考慮すると、一般的な業務よりも費用は高額になりがちです。

案件に応じて、難易度も手続きの量も全くことなるため、

安易に本書において目安となる費用を提示すべきでないと考えています。

ただ、私の知る範囲で各事務所がどのような報酬規程を定めているかというと、例えば「財産額の〇%」や「信託契約書作成30万円から~」「所有権移転及び信託の登記申請10万円から~」のように定めているケースが多いかと思います。

当事務所での、「報酬部分だけ」をお伝えしますと「信託契約書作成」と「所有権移転及び信託の登記申請」併せて、30万~60万円(税抜)(※)に収まる事例が多いですが、地域によって、不動産の価値も全くことなるため一概にいえないことはご理解いただきたいと思います。

※信託契約書を公正証書にする場合は、公証役場に支払う費用が別途かかります。登記申請に際に必要となる登録免許税は別途かかります。(いずれの費用も信託財産の価格に応じて変動します。)

注意点6:家族信託を得意とする専門家が少ない

繰り返しになりますが、この家族信託は専門家の中でも経験したことのない方がまだまだ多いのが現状ですので、特に地方にお住いの方については、家族信託に対応できる専門家を探すことから苦労するかもしれません。

法務・税務の両面からサポートしてくれる複数の専門家に依頼されるのがベターかと思います。

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